続きを書いていると思いの外長文になってしまった…
少し間があきましたが、残しておきたい内容なので、徒然に綴ります。
サラリーマンから百姓に
前振りが長すぎました。すみません。
ここらでタイトルの種明かしでも。
別に、農業を始めたわけではありません。(近しい活動もしてますが)
農家ではなく、百姓になったのです。
百姓と聞くと、江戸時代の農民を想起されるでしょうか。
そうです。その通りです。
では彼らの仕事とは一体なんでしょう?
来る日も来る日もただひたすらに土地を耕し、作物を育てる。ずっと同じルーティンをやってるイメージですよね。
ところがどっこい。
農業以外にもたくさんの事業を手掛けていたようです。
そもそも”百姓”とは、百の生業を持つ者という意味。
『日本再興戦略』より、落合陽一さんのお言葉を引用します。
百姓とは、単なる農業従事者ではありません。言葉のとおり、百姓とは生業が100個ある人たちです。いわば、自営業者、マルチクリエイターです。農業をする人もいれば、木工をする人もいる。文章を書く人もいれば、祭りを取り仕切る人もいる。一般的に、医術も百姓の生業のひとつであって、医者も農に属していました。要は、100ぐらいの職のバリエーションをポートフォリオマネジメントしてきたのです。
引用元:落合陽一『日本再興戦略』
知識の幅が広過ぎて驚愕…(めちゃくちゃ面白いので読んでみてください)
実は全く同じことの繰り返しなどではなかったという。
何かの専門家というより、コミュニティに必要とされるものをたくさん提供していたようです。全然、武士とか商人よりもクリエーションしている感じ、なんだかイケてる。
そうなんです。
20代のうちに百姓をやってみたいなーと思ってしまったんです。
現に今は、サプライチェーン上の課題解決を進めながら、知り合いのホームページを作りながら、ブログを書きながら、イベント企画をしながら、留学準備やいろんなお勉強をしています。(全然100個に満たない)
そういえば先日飲んだとある後輩くんが、”Lifeワーク”と”Riceワーク”というお話をしていました。これもポートフォリオワーク的な発想ですね。
上質な表現なので今後はパクらせてもらいます。
Lifeよりなワークか、Riceよりなワークか、という表現になるでしょうが。
ここからは百姓に踏み切ってしまった理由について。
わしゃいつまで働くんじゃ?
簡単に言うと、『LIFESHIFT』的なお話です。
人生100年時代を前提とした上での生存戦略指南書、とでも呼ぶべきでしょうか。
ベタな本ですが、大きく舵を切ろうとしている今、何度も読み返しています。
そしてこれからも何度も読み返すでしょう。
あいにく僕は20代にして健康診断ゴリゴリのE判定と、活力資産(後述)薄めなので100年も生きられないでしょうが…
曰く、
人生100年を前提にすると、かつてのような①教育 → ②仕事 → ③引退後、という3ステージで構成されていた典型的な人生設計は破綻し、マルチステージ的な人生をデザインする必要が出てくると。
人生100年時代に②のフェーズで一生懸命貯蓄したところで③を賄いきるのは、甚だ無理ゲーだというのが大前提の考え。
こちらの図をご覧ください。

本書で紹介されている、1998年生まれのジェーンという架空の人物(100歳まで生きる)の引退年齢と貯蓄率の関係性を表したグラフです。
要は「何歳で引退して、引退後望む生活資金がどの程度なら、勤労中にこれだけ貯蓄が必要だよ。」シミュレーション。
これに拠ると、仮に65歳で引退して、引退後は最終所得の半分を生活資金として希望するなら勤労時代に25%の貯蓄をしなきゃいけないようです。
そんな常人離れした修行を毎年実践している人なんて、かなりの少数派な気がします。
まあ、10%くらいなら貯金してるよ。
そういうあなたは、85歳まで働くと、100歳まで最終年収の半分を生活資金にしても生きられるみたいです。
現時点でほどんど貯金がない私もご多分に洩れず、85歳までは働くことは必至。(生きてたら)
せっかく寿命が伸びて喜んでいたのに、その分労働時間が伸びますよとのあまりに悲しいお知らせ。。
どうやら本腰入れて人生を考える必要がありそうだ。
もちろん、働くといってもその年まで週5で企業勤めなんてしていないでしょう。何らかの形で、自分もしくはパートナーと共に、生活を存続させるためのRiceワークと少しの貯蓄ができればよいのです。子どものお世話にならず。
沈まぬ船なんてなさそうな気がしてきた…
ここで当然出てくる1つの疑問。
「85歳まで働くことなんてそもそも可能なのか?」
イブラヒモビッチ級のフィジカルでもないかぎり80で肉体労働は至難の業。
となると頭を使った仕事か。。(体力があれば農業はやっていたい)
さて。
この先55年間存続する会社、あるいは価値を発揮し続けるナレッジやスキルなんてものはあるのでしょうか?(85歳は私にとって55年後のお話)
今から55年前(1965年)ってこんな時代らしいです↓
https://www.aflo.com/ja/editorial-images/features/910
写真がほぼ白黒!!
”いざなぎ景気”や”3C(Car/ColorTV/Cooler)”といった高校現代史頻出ワードが列挙されています。
この時代に、トヨタが「クルマをつくる会社」からの脱却を謳い、東芝がカラーテレビ工場を閉鎖することになるなんて想像もつかなかったでしょう。
重要なのは、60歳で定年を迎えるAさん(勤労約40年)は最悪のシナリオに陥る前に退職金をゲットしてリタイアできたが、85歳(勤労約60年)まで働くBさんはしっかりと時代の波に飲まれるという点です。
カラーテレビ製造現場で55年勤め上げてきました!という人がこの知らせに触れた時のショックは想像に難くないですね。既に定年されているので現時点でそんな人はいないでしょうが。
そして、多くの知識人が語っているように、このような波はより短いスパンでやってきます。より大きなうねりを伴って。
アメリカの株価指数として代表的なS&P500。
この構成企業の平均寿命は、1960年代に約60年だったものが、現在では20年足らずまで縮んでいるようです。
もちろん、日本の企業はアメリカほど栄枯盛衰が激しくない。今のところ。
アメリカの代表的な企業が窮地に追いやられた1つの要因は、デジタルネイティブ時代の申し子達に見事なまでに食い破られた点だと言われています。豪華客船で寝ている間にテクノロジーコーティングした小型船舶の航跡波で転覆しちゃったんです。
昨今、日本でも盛んにDXだのD2Cだの叫ばれていますが、デジタル化が進めばアメリカほど激しくなくとも、淘汰が進むでしょう。既にAmazonが小売をディスラプトしているし、バルクオムやFABRIC TOKYOなどのD2Cブランドが台頭しています。
こんな状況に鑑みても、揺り籠から墓場までの距離が縮まるのは間違いなさそうです。
人間の墓場は遠ざかっているというのに。
となると
60年間勤め上げようとしても、意に反して辞めざるを得ないことがある。しかも、1回では済まない。多分。
そんな事実から目を背けてはいけない。
(少なくとも同年代の友人で定年まで働くぞとの決意を披歴している人物はいないが)
どうやら絶対転覆しない船なんてないみたい。厄介だが、自分で泳ぐ力を付けないと。
溺れない泳ぎ方ならあるのか?
ここまでは社会に出る前からも何となく意識していたこと。
ここからは、絶対溺れない泳ぎ方なんて身に付けられるのかというお話。
結論から言うと、そんな無敵泳法はないと思っています。
強いて言えば、平泳ぎ?それでも持って数十分。
仮に今の状態の海は泳げても、潮の流れが変わったり、嵐に見舞われたりするのは不可避。しかも、どういうわけか、より頻繁に、度を増してやってくる。
こんな中、生存確率をあげるにはどうすればいいんだろうか…
もしものときは「浮いて待て!」~落水や波にさらわれたら~(海上保安庁)
「浮いて待つ。」
これだ。見つけた。
海難事故では背浮きが最も生存確率が上がる方法らしいです。
「俺は30年間クロールを磨き上げてきた。転覆しようが陸地まで泳ぎきったる!」
不足の事態では、これが一番危ないパターン。無論、区民体育館の温水プールや、陸地は目の前という状況なら話は別ですが。
しばしメタファーが過ぎましたので、『LIFESHIFT』より言葉を拝借。(自分でもわからなくなってきた…)
進化学的に言うと、子どもは大人より柔軟性に富み、適応力が高い。大人のような保守的なものの考え方が形づくられておらず、特定の行動パターンに染まってもいない。「変わらない」ことは、直線的に進む3ステージの人生では好ましい結果をもたらしたかもしれない。変化を遂げる必要性が乏しく、そういう機会も少ないからだ。しかし、長く生きる時代には、硬直性がマイナス材料になり、若々しさの価値が高まる可能性がある。
引用元:リンダ・グラットン / アンドリュー・スコット『LIFESHIFT』
6年間サプライチェーン畑を歩んできましたが、奥深くて面白いし、まだまだ知らないこともたくさんある。もっとdeepな領域まで踏み込みたい気もしますが、今は全く違う世界に触れたい気持ちが勝っている。
シェアリングのトレンドをみても、パーソナライズの流れを汲んでも、量産的なモノづくりは先細りでしょう。取引先とのネゴシエーション的な仕事は残っても、全体的にみて仕事の総量は減るだろうし、減らす方向に仕向けたい。(仕事をなくす仕事は当分なくならなさそう)
引退までSCMという仕事が残っている保証なんて全くないし…
あと55年働くことを考えたら、20代最後のこのタイミングで別なフィールドにリソースを割いてみてもいいだろうし、それが賢明だとも思う。願わくば、0→1のクリエーションをしていきたい。
サプライチェーン畑は耕しながらも、他のやりたいこともやっちゃえ。
体の力を抜いて、手足を大の字にして流れに身を任せてみよう。
そんなことを思ったり。
よし、「資産」を総合的にマネジメントしていこう。
『LIFESHIFT』に話を戻す。
現代はVUCAな時代と言われて久しい。
そんな世の中を生き抜く処方箋として、かつての伝統的な3ステージの人生から脱却し、下記のようなステージを積極的に取り入れることが提案されている。
エクスプローラー
旅をすることで自己理解を深め、幅広い進路を模索するステージ。
インデペンデント・プロデューサー
事業活動を通した学習を目的に、自ら職を生み出すステージ。
ポートフォリオ・ワーカー
異なる種類の仕事や活動を同時並行的に行うステージ。
根底にある考えが、拡張的な資産の捉え方。
本書で「資産」とは、「ある程度の期間にわたり恩恵を生み出せるもの」と語られています。
現金や自動車、マイホームのような目に見えるものだけでなく、スキルや知識、健康な体、人的ネットワークなども立派な資産との位置付けです。
こんな感じ。

前述の3つのステージはいずれも、有形資産よりも無形資産への投資に重きが置かれています。
先生方の右ストレート決まったり。
もやっとしていたものがクリアに言語化され、脳天が揺さぶられました。
早い話、これらのステージを早速実践してみたいなと思ってしまったのです。
寄り道したっていいじゃない。
先に述べたHindustan Dreamを捨てたわけではありません。
Social Businessには必ず携わります。
ただ、一直線に向かわなくもいいじゃないかと考えをシフトしただけです。
山口周さんが著書『NEWTYPE』にて、生産性と遊びの関係について、アリ塚の研究を通して興味深い考察をされています。(この本にもとてつもなく揺さぶられました)
書くと長くなるので、こちらの1ページ目を読んでください。
とある実験で、100%真面目なアリだけで構成されるアリ塚よりも、餌までの軌跡をきちんと辿れないマヌケアリが一定数混ざっているアリ塚の方が、餌の持ち帰り効率が高いという結果が出ていると。
マヌケアリがエラーを起こしている過程で、偶然にも既存の道とは異なる近道を発見する。別のアリも新たに発見された近道をトレースすることで結果的に餌の持ち帰り効率が上がるというお話。
短期的にみると、マヌケアリがいる方が生産性は下がるが、中長期では逆に生産性の向上を得られたのです。
翻って、自分の人生に当てはめたときに、一直線に進むよりも上記3ステージ(=遊び)を盛り込んだ方がでっかいSocialインパクト残せるんじゃないかと思ったりするのです。
当面はこんな感じで生きてこう。
そんな私の資産増減見通し(=人生設計)を『LIFESHIFT』に沿って雰囲気で書いてみる。あくまで現時点での。

今がまさにポートフォリオ・ワーカーのステージというわけです。(3つとも当てはまりそうな気もしますが…)
来年から移行期間(大学院進学を検討中)に入り、その後インデペンデント・プロデューサーという具合に。
フラフラしてんじゃねえよ、と後ろ指を指されることもあるかと思いますが、先生方に肯定してもらいます。
旧来の3ステージ的な発想では、このような若々しい生き方は間違っているように見える。実際、無責任だと批判されることも多い。しかし、マルチステージの人生の発想に立てば、それは無責任さの表れではなく、無形の資産への、とくに選択肢を生み出せる要素への投資に熱心な姿勢とみなせる。
引用元:リンダ・グラットン / アンドリュー・スコット『LIFESHIFT』
とかく、「この泳ぎ方1本で戦ってくぜ!」と決め込まず、背浮きができればいいじゃないか。(沈まず浮いているためにも多少の労力は要る)
全身の力を抜いて、柔らかく、しなやかに、時代の波に飲まれず生き抜く。
もちろん、本気のクロールをみせる時期も必要。
ひとまず6年間はがむしゃらに泳いだ。
ここからはしばし背浮きの練習。
よし、一旦これでいこうとやんわり決意した令和二年の立春の候。
お世話になった上司に会社を辞めることを告げる。
そして私は百姓になりました。
おわり
サイト構築ありがとう。
年末年始はステイホームで早速記事書きまくりです。
僕は資産を捨てて、早く仙人になりたいです笑
こちらこそ、初案件ありがとうございました。
Blog書いていると、評判・スキルや多様な人的ネットワークなる資産は自然とメンテされていきますよね。
ステイホーム中の素晴らしき投資ですね。
WorksにBoxcode入れておきます!
Tableau、SQL、Pythonのお勉強したい方は是非。
https://boxcode.jp/
大変勉強になりました。昨年の春に肩を痛めて以来、実戦登板もままならない状況です。三角さんの仰る”Breaking the border”の精神で、今年のキャンプを乗り越えようと思います。これからもタメになる野球哲学、ぜひ執筆してください。
球界からボーダーを超えてのコメントありがとうございます。
「中1でリタイアしたおれの野球道」なる本も、執筆しようかと思います。
これからもご愛読くださいませ。
MIKADOさん、高校生のときからNewtypeって言ってましたね。
2007年発足のNewType同好会は魁的な存在ですね。あの頃から遊びを盛り込むスタイルは変わっていないようです。